メインテーマ「つくる責任、つかう責任」報告
メインテーマ「つくる責任、つかう責任」報告
―つくる責任、つかう責任―
(スライドNo.)生活クラブは2015年に、「食(Food)」、「エネルギー(Energy)」、「福祉・たすけあい(Care)」を地域で自給できるようにする「FEC自給ネットワーク」の実現に向けて動き出しました。次世代の子どもたちのために、人と自然が共生する持続可能な生き方を選ぶという決意を、「サステイナブルな人」というスローガンに込めています。
F、E、C各々に、独自の原則を定め活動するとともに、全体的な原則のバージョンアップを図るため、理念・ビジョンを「生活宣言」としてまとめました。「10の Think & Act」は、ブランド戦略や「FEC自給ネットワーク構想」を踏まえ、生活クラブ原則「安全・健康・環境」をベースにして作った、生活クラブにかかわるすべての人びとの行動原則です。
世界では、格差と貧困、人口増加、生態系を維持できないほどの大量生産と消費、気候危機など、様々な問題があります。これらを2030年までに解決することを目指した世界共通の目標がSDGsです。2015年9月の国連総会で採択されました。
生活クラブが50年にわたり思い描いてきた未来は、SDGsがめざす世界につながっています。
SDGsの目標を達成するために生活クラブの事業や活動で更に推進すべきこととして、「第一次生活クラブ2030行動宣言」を2020年にまとめました。2015年から目指している、FEC自給圏ネットワーク運動にもつながる内容です。
さらに検討を重ね、8つの重要目標を決定。食、エネルギー、福祉・たすけあいに関わる分野と、非戦と平和について定めた7つの重要目標は、SDGsの理念に通ずるものです。8つめは組合員活動についてまとめた、SDGsに留まらない生活クラブらしい目標です。2022年には第二次の宣言を行なう予定です。各地域で行なっている活動や、まだ取り組めていないことについても議論していきます。例えば、プラスチックごみの問題や気候変動への対策、働きやすさやジェンダーフリーのこと等、多岐にわたります。2030年にこうありたいというゴールを設定し、そのためには何をすべきかを考えていきます。
今回の宣言は、生活クラブに関わるすべての人々と共に取り組んでいく目標です。組合員や職員、生産者や関連会社、生活クラブを応援してくれているみなさんにも、まずは知ってもらいたいです。そして、サステイナブルな生き方って心地いいと、生活の中に取り入れていく人が増えていくことを願っています。
ここからは、本会議のメインテーマ、SDGsの12番目の目標「つくる責任、つかう責任」について、生活クラブの理念・活動の中から報告します。生協事業は、共同購入事業をメインとし、生産・流通・消費・廃棄までの過程を包括しています。本会議をきっかけに、新たな側面の責任を見つめる機会になると思われます。
「2030行動宣言」の中で定めた8つの目標のうち、テーマにかかわるものを、3つ報告します。
1つめ、「食料主権の考え方を基軸とした、国内生産の追求と、公正な調達を行います」。命の産業である第一次産業(農業、林業、漁業)において、種に至るまでの国内自給を追求し、生産情報の開示をすすめます。また、国内外を問わず、生産に従事する人々の人権に配慮し、合意に基づく調達を行ないます。具体的な取り組み例は、鶏卵と鶏種についてです。鶏卵そのものだけでなく、卵を産む鶏種についても国内自給に取り組むことで、持続可能な鶏卵の生産と消費を目指しています。
2つめ、「素材本来の味、食材にまつわる知恵や文化を大切にして、健康で豊かな食の実現をはかります」。人体に有害と考えられる添加物や薬剤の使用を限りなく削減し、健康を保つことに貢献する食材の使い方や摂り方などの情報を積極的に共有します。できるだけ化学合成農薬や化学肥料を使わず、栽培履歴が明らかなアースメイド野菜を組合員と生産者とで作り、消費していることを具体例としています。
3つめ、「地球の生態系を維持するため、海や陸の環境保全と気候変動対策に取り組みます」。生物多様性をおびやかす遺伝子操作を行なった食べ物を扱わないことを基本とし、その生産に反対します。また、生産・流通・消費・廃棄の各段階での環境配慮とともに重点的に温室効果ガスの削減に取り組みます。リサイクルよりもさらに環境負荷の少ないリユースで、容器包装ごみを削減する取り組み「グリーンシステム」を1994年から継続しています。また、遺伝子組み換え・ゲノム編集など遺伝子操作を行った食べ物の生産に反対し、区分管理された原料・飼料の使用も求めています。
地域の組合員は、日々の生活の中から自分の取り組むべきテーマを見つけ、独自の活動を展開しています。生活クラブ千葉と生活クラブ東京の、国内自給力アップのための活動を報告します。まず、千葉です。
産地との交流を3つ、紹介します。最初は「トマトの学校」です。加工用トマトの栽培(定植と収穫)を体験し、生活クラブが国産の原料を使用している意味を学習することが目的です。
「海の学校」です。気候変動による漁業への影響や千葉県内の海と魚の話を生産者から聞き、食や海のごみ問題を考えクリーンアップ活動にもつなげることを目指しました。
「畑の学校」です。農作業、援農への参加を呼びかけています。
場所は、「生活クラブ・虹と風のファーム」です。ソーラーパネルの下でボランティアや障がいのある方など多様な人々が農産物の栽培から販売まで関わっています。作ることも食べることも実感でき、農業と福祉の関係について理解を深められる場でもあります。「トマトの学校」もここで開催しました。農産物を共同購入することが、FEC自給圏づくりにつながる仕組みになっています。参加することで、この取り組みの価値を実感し、理解につながります。また、結果としてFEC自給圏づくりにも貢献することになります。
全ての企画で定員を大幅に超える申し込みがあり組合員の、産地や生産者への関心の高さがわかりました。お子さんの参加も多く親子参加できる点やコロナ禍での屋外活動ニーズの高まりも参加者増の要因と考えられます。国産原料を使う意味や海のごみの問題などを考えるきっかけとなり、お子さんも、参加することで、生活クラブの活動が未来につながることも期待できます。
生産者の情報開示と消費者の点検、「消費材Step Up点検」活動です。組合員が生産現場を訪れ、共に決めた基準に沿ってきちんとつくられているかを生産者と対面で点検します。写真は2020年10月の、牡蠣味調味料の点検の様子です。
以上の活動を通して、組合員は「生産する消費者」の視点を持ち国内自給の意義を体感しています。
次に東京の、ビジョンフード予約に関する活動です。
牛乳、鶏卵、米、畜肉、農産物をビジョンフードと名付けています。これらは、国内自給力向上や 生態系の維持など大きなビジョン(展望)があるとし、そのように名付けました。生活クラブの食料政策の根幹をなすものであり、安定的な利用を呼びかけています。ビジョンフード予約は、このビジョンフードを年間予約することで持続可能な生産と消費をつなぐしくみです。
2020年4月開始の「予約・あっぱれはればれ野菜おまかせ4点セット」の予約を呼びかけるため、2019年12月から活動をスタートしました。これは、関東地域の提携生産者5団体が連携して、週10,000セットの食べる量と作る量を同じにする実験取組みです。予約することで生産者は野菜を余すことなく出荷でき、ロスの削減や持続的な生産につながります。あっぱれはればれ育ち野菜とは、栽培期間中に化学合成農薬や化学肥料を不使用または削減して育てた野菜です。
地域ごとに、学習会や生産者交流会、チラシを活用して事前に予約を取りながら理解して食べる組 合員を増やす活動です。
目標は3,600セット。申込み開始、初回は4,755セットと目標比132.0%。活動の成果が現れましたが、その後徐々に予約人数、食べる量が減り半年後にはマイナス589セットとなりました。旬の野菜が連続して届くこともあり、1回休みをする組合員が一定数いることがわかり予約後のフォロー活動の必要性を感じました。
人参のおすすめ18レシピをインスタグラムで発信し、使いこなし術を紹介。毎週利用につなげます。
2021年1月から3月は、予約人数を増やすため、活動しました。目標は4月初回の予約人数4,745人。予約者には手紙や電話かけで予約継続や毎週利用を呼びかけ、未予約者には取組みの意義を伝え、新たな仲間を増やします。
活動の結果、一年後予約人数は前年対比で+129人、セット数は110.4%の実績でした。引き続き、生産者との約束3,600セットを維持するために、手紙やレシピ集を配布する等して、定期的に新規の予約や継続利用を促す活動をすすめます。